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サキ(河田智雄訳)『サキ傑作集』

有名人が書いた私小説の売上や文学的評価は
仮に有名人であることを秘して公刊した場合でも同じだったのかしら(^_^;)
私小説だと著者の人柄や経歴と切り離して作品だけを鑑賞するのは困難だろうし、
他方、著者が無名だと余程のことがない限り売上はフツー伸びないよね(+_+)

さて、新潮社HPの著者紹介では、

  欧米ではO・ヘンリと並ぶ短編の名手と評されている。

と書かれているが、有名どころか、おそらく一般の知名度はかなり低いであろう、
サキ(河田智雄訳)『サキ傑作集』(岩波文庫,1981)を読了。

個人的にはハズレがないわけでもなく、本書収録の全作品が「傑作」とは思えないけど、
意外なオチから、怪奇、ホラーあるいは奇想天外な話まで、どれも読み手を飽きさせない、
これだけの短篇ストーリーを次々と思い付いた著者は掛値なしに「短編の名手」(^^)

本書所収の作品21篇は次の通り。

アン夫人の沈黙 The Reticence of Lady Anne
狼少年 Gabriel-Ernest
二十日鼠 The Mouse
トバモリー Tobermory
刺青奇譚 The Background
スレドニ・ヴァシュター Sredni Vashtar
イースターの卵 The Easter Egg
グロウビー・リングトンの変貌 The Remoulding of Groby Lington
開いた窓 The Open Window
宝船 The Treasure-Ship
蜘蛛の巣 The Cobweb
宵闇 Dusk
話上手 The Story-Teller
物置部屋 The Lumber-Room
毛皮 Fur
おせっかいと仕合わせな猫 The Philanthropist and the Happy Cat
クリスピナ・アムバリーの失踪 The Disappearance of Crispina Umberleigh
セルノグラツの狼 The Wolves of Cernograts
人形の一生 Morlvera
ショック療法 Shock Tactics
七つのクリーム壺 The Seven Cream Jugs

小生の趣味では、「トバモリー」がまさに「傑作」で、
その軽妙な会話シーンのブラックユーモアに大笑いしつつ、
この著者の作家的想像力・物語構想力にイカれてしまった(^_^;)
いつか猫を飼うことになったら、トバモリーと名付けよう(^^)v
黒猫だったら、ロデムだけど(^_^;)

とりあえず今後の読書・購入用にサキの文庫本をリストアップ(^^)

中村能三訳 『サキ短編集』(新潮文庫,1958)
中西秀男訳 『ザ・ベスト・オブ・サキ』(サンリオSF文庫,1978)
   同  訳 『ザ・ベスト・オブ・サキⅡ』(サンリオSF文庫,1982)
      ⇒新たに4篇を訳出した『ザ・ベスト・オブ・サキ』Ⅰ・Ⅱ(ちくま文庫,1988)
田内初義訳 『サキ短編集』(講談社文庫,1979)
大津栄一郎訳『サキ傑作選』(ハルキ文庫,1999)

サキ愛読者の皆様が各文庫本の収録作品名をネットに紹介してくれてるのは助かるm(__)m
ただ、原題が載ってないため、収録作品の異同が分からん(^_^;) ・・・と思ってたら、
「着地した鶏」様が原題、邦訳名、収録書名の分類リストを作成されてたm(__)m

http://mypage.syosetu.com/mypageblog/view/userid/34934/blogkey/630632/
http://mypage.syosetu.com/mypageblog/view/userid/34934/blogkey/630704/

それにしても、上記の如く、意外に出版されているし、
最近も全28篇収録の和爾桃子訳『クローヴィス物語』(白水Uブックス,2015)が出てた(^^)
1916年に戦死ゆえ既に著作権が切れたっぽいから、出しやすいのかしら(..)
でも、こんなに面白い短篇を書いてるのに、О・ヘンリーに比べ知名度が低すぎる(;_;)
有名じゃないから売上が悪いのか、新潮文庫以外は品切みたい(+_+)

実家のゴミ屋敷化した自分の部屋を片づけてたら、
松村明&三省堂編修所編『大辞林』(三省堂,1988)第一刷が出てきた(^^)
サキはネット上の『大辞林』第三版には出てるけど、
この『大辞林』の初版の第一刷には載っていなかった(;_;)
「オー ヘンリー」は311頁にちゃんと載ってるのに(^_^;)
全短篇が翻訳・出版されるよう、もっと有名になりますように、とお星さまにお願いだ(^^)

さて、最後に、余談だが、
この『大辞林』の初版の第一刷の1910頁に、
経済学者・思想家のハイエクが載っているんだけど、
なぜか1984年に没となってた(`^´)
亡くなったのは1992年なのに(-_-)

あの『日本大百科全書』18(小学館,1987)の初版の第一刷の492頁の
ハイエクの項でも1974年(ノーベル経済学賞を受賞した年!)没となってたし、
殺されやすい人なんだね(+_+)

手元に現物がないし、記憶違いかもしれないけど、
たしか『広辞苑』も改訂して(やっと)ハイエクを載せたのに、
同じように没年が書かれてて(タネ本の外国のWho's Whoにミス?)、
でも、その直後に亡くなったような・・・デスノート(^_^;)

[追記]

安原顯『ジャンル別 文庫本 ベスト1000』(学習研究社,1995)で、紀田順一郎が「ノン・
ジャンル ベスト50」の一冊に中村能三訳『サキ短編集』新潮文庫を推奨(同書249頁)。

  むかしから翻訳も多いが、意外に読みにくく、疲れるものが多いのは、日本語と英語の
  相違性に無関心のため主語の省略が多すぎ、読み返さないと理解し難いためだろう。
  中村訳はその点よくできている。

[追記160413]

震災で本棚は倒れ書類の山も崩れてゴミ部屋に拍車が掛かった実家自室の片付け作業中だが、
必要な本&書類を運んだ自宅の書斎&書庫が新たなゴミ部屋と化したため、談志未亡人の名言が
思い出されるも、1枚の官製ハガキを発掘し「記憶違い」でないことを確認したので追記する^_^;

差出人欄は住所・電話番号(案内)ともども「株式会社 岩波書店 広辞苑編集部」と印刷されてた
(ちなみに、「電話直通」と印刷されている方は電話番号が記されてなくて空欄のままだった)。
消印は「神田」局でその日付は「92.3.6 8-12」となっていて、コレが重要なポイントとなる^_^;

ハガキ裏面は右端の方に次の4行が印刷されてて、「小社」だけ他の活字より小さいのは流石(^^)

  拝啓 日ごろ御愛顧を賜り深く感謝いたしております。このたびは小社刊行の
  「広辞苑 第四版」について御懇篤な御指摘をいただきありがとうございました。
  今後ともよろしく御指導下さいますようお願い申しあげます。     敬具

        年  月   日

この4行目は手書きでそれぞれ「一九九二」「三」「五」と記入されており、日付に要注目^_^;

ハガキ裏面の大部分を占める何も印刷されてない空白のスペースは、手書きで7行の文面だが、
署名がなく、差出人名からしても私信には当たらないだろうと判断し、冒頭3行半を引用する
(同じく発掘されたY本N彦からのハガキは判読に苦しむ字だが、岩波は丁寧で読み易い字)。

  二月二十九日消印のお葉書をいただき、ありがとうございました。
  「ハイエク」についてご教示いただき厚く御礼を申しあげます。
  ご指摘の通り、現存していますので、次回増刷の折に訂正する
  準備をしております。・・・

この後は「ご担当の先生が・・・」で、「とりあえず一筆、御礼とおわびを申しあげます。」と〆。

こんなことしてたのかぁと当時の自分に呆れたが、こんなブログやってる今の方が悪趣味か^_^;

それはさておき、『広辞苑』第四版を実家ゴミ部屋で捜索したのだが、何故か発見できず(;_;)
仕方がないので図書館で確認した^_^; ちゃんと各版を書庫で保存する図書館に感謝m(__)m

1991.11.15発行の『広辞苑』第四版第一刷2028頁「ハイエク」の項は没年として「一九八四」
(ちなみに生年は「一八九九」)とあった^_^; 『大辞林』初版第一刷と同じミスだね(@_@;)

さて、ハイエクの実際の没年は前述のように「1992年」だが、亡くなった日は実は3月23日!
広辞苑編集部から礼状が届いた約2週間後のことゆえ、当時のmiddrinnも吃驚したろう(@_@;)

「次回増刷の折に訂正する準備をしております」とあったけれど、どのように〈訂正〉された
「増刷」となったのかしら^_^; 存在しないだろうけど、没年が削られた第四版を見つけたら、
せどり男爵じゃなくても「ブルブル震えて昂奮」し「失禁しそうにな」るかも^_^; 当然だが、
1998.11.11発行の第五版第一刷の2107頁の「ハイエク」の項の没年は「一九九二」となってた。

明日で開設一周年を迎えるのに、こっちのブログを放置しすぎたので、追記してみた次第m(__)m
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着地した鶏

サキの未訳一覧に目を通して頂いたようで、どうもありがとうございます。
日本ではマニアックな感の否めないサキですが、昨今の俄に沸き立ちつつあるサキ・ブーム(エンターブレイン社でのコミカライズに、風濤社・白水社・理論社と相次ぐ新訳発刊)や水面下で静かに事を進めるアマチュア翻訳家たちを見るにつけても、サキの作品を容易に手に取れる日もそう遠くはないかもしれませんね。
by 着地した鶏 (2015-08-07 12:50) 

middrinn

着地した鶏様には、拙文をお読みになって頂いた上にコメントまで頂戴し、大変恐縮恐惶ですm(__)m またサキ情報も御教示して下さり、心より御礼申し上げますm(__)m 小生の如きサキ初心者にとって、玉稿は今後の読書案内として大変ありがたい労作でした(^^) サキ・ブームの由、既存の文庫本も重版・復刊してくれると個人的には嬉しいですね(^^) 今後とも宜しくお願い申し上げますm(__)m
by middrinn (2015-08-07 13:58) 

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