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杉本苑子『引越し大名の笑い』

初出誌が「歴史読本」で、
歴史小説なのか史伝なのかよく分らぬ作品を集めたものなので気楽に読んだのが
杉本苑子『引越し大名の笑い』(講談社文庫,1991)。

作品名や最初の登場人物の名前から、
持てる知識を総動員してストーリーの展開や結末を予想するのが、
小生にとっての歴史小説の醍醐味だけど、勿論、歴史上の人物の知らなかった史実や逸話、
あるいは、その人物そのものを知らない場合でも読んでて愉しい(^^)
本書収録の各作品も面白く読めた(^^)

どんな内容か思い出せるよう、ネタバレにならない範囲で収録作品の主な登場人物をメモ^_^;

逆臣の座・・・上杉禅秀 足利満隆 岩松満純 足利持氏 足利義嗣
武蔵野の虹・・・速水万里[万里集九] 太田道灌 太田資康 扇谷上杉定正
詐術・・・森三左衛門吉成[可成] 織田信長 戸部新左衛門豊政
悲歌 上月城・・・山中鹿之助幸盛 立原源太兵衛久綱 尼子勝久
野望消えず・・・伊達政宗
働き蜂・・・蜂須賀彦右衛門正勝 豊臣秀吉
医者どの従軍記・・・板坂卜斎[2代 宗高] 徳川家康
誰がために舞う・・・天海 崇伝 藤堂高虎
引越し大名の笑い・・・松平直矩 松平直政
南竜公ご謀叛・・・高井伊織 徳川頼宣

表題作は大変魅力的な主人公に描かれてて良かった(^^)
ただ、小説だか史伝だか不明なので、論うわけではないけど、
海音寺潮五郎『新装版 列藩騒動録(上)』(講談社文庫,2007)
福田千鶴『御家騒動~大名家を揺るがした権力闘争』(中公新書,2005)
の両書に照らし合わせると、ちょっと変なところがあったね^_^;
百瀬明治『御家騒動~江戸の権力抗争』(講談社現代新書,1993)には出て来ない(..)

1976年1月の「南竜公ご謀叛」以外は、どれも1960年代に発表された作品なので、
気になる箇所は勿論あったけど、敢えて非常に些細な点だけ1つ挙げると、
本書262頁に、

  茶頭の那波道円が切り炉の前に坐って、・・・

那波活所は儒学者で頼宣に儒臣として仕えたはずなのはさておき、
この「頭」という字に「がしら」という振り仮名が付けられているが、
桑田忠親『茶道の歴史』(講談社学術文庫,1979)42頁によると、

  ・・・昔はお茶のことをつかさどる茶人の頭を茶頭といった。

として、「茶頭」には「さどう」と振り仮名が付けられている^_^;
そして、桑田は、この「茶頭という歴史的な言葉と混同」しないように、
「茶道」は「ちゃどう」と「よんだほうが、はっきりして、いいんじゃなかろうか
と思っている次第です。」と続けている(^^)

桑田忠親『武将と茶道』(講談社文庫,1985)238頁の「文庫本刊行に際してのあとがき」に、

  元来、国文学科出身の私は、若い頃、小説家を志したこともあるが、・・・/その点、
  『武将と茶道』は、私の唯一の歴史小説作品集といってよいかもしれない。このなかで、
  亀井勝一郎氏や川端康成氏などに認められたものも、二、三篇はある。

と記しているが、同書のどの作品のことか気になる^_^;

[追記160218]

南條範夫『大名廃絶録』(文春文庫,新装版2007)にも名前が出てたのを忘れてた(+_+)

[追記160827]

奈良本辰也ほか『日本史こぼれ話』(角川文庫,1981)192~193頁に「初婚で処女」という話^_^;

  東洋史学者の那波利貞は、京都大学を定年退職してから、重大なことに気がついた。
  早く夫人を失った彼には継嗣がなかったのである。那波家は代々、徳島藩の儒者だった
  家柄で、先祖には那波活所(一五九五―一六四八)というような大学者も出ていた。

んで、「花嫁探し」を始め(「定年退職」後!)、「花嫁の条件」は表題の通りだったとか(@_@;)
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