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ネルソン・デミル『アップ・カントリー』

730頁と870頁のヴォリュームは寝床でも手が辛かったが
めげずに一気に読み通せたくらい超面白かった
ネルソン・デミル(白石朗訳)『アップ・カントリー~兵士の帰還』上・下(講談社文庫,2003)。

本書を購入した理由は今となっては定かではないが、
週刊誌あたりの書評か紹介記事で推奨されてたのを読んだのだろう。
でも、今まで一行も読まずに書棚に並んでた理由ははっきりしている。
上下巻合わせて1600頁! しかも、海外作品だから、躊躇するわな(..)
でも、短篇が続いたので、頭のマラソンに、と手を出してみたら、
あまりの面白さに読むのを止められず一気に完走(^^)
おかげで連日寝不足に(+_+)

主人公の台詞や独白が面白すぎて声に出して笑うことしばしばで人前では読めない^_^;
ストーリーは勿論、敵役のキャラもいいし、ヒロインが魅力的で小生の好みだった(^^)
一応ミステリーの範疇だろうし、多くのレヴューが出てるので、内容は書かないけど^_^;

ただ、ヴェトナム戦争やインドシナ戦争の知識があれば、もっと深く読めたのに、
とヴェトナムについての自分の不勉強をちょっと後悔してるところ(..)
主人公がヴェトナム戦争時を回顧した件はメチャ凄惨で、読んでる方も胸が痛んだ(;_;)
本書上巻270頁のヒロインの台詞

  でも、わたしの世代にとって、ヴェトナムはあくまでも国の名前で、戦争の名前じゃないの

に小生は逃げたくなるよ(..)
それでも「ディエンビエンフーの戦い」や「テト攻勢」など断片的な知識は持ってたけど(..)
旧ルパン(最近は第1シリーズとか第1期とか呼ぶらしい)の視聴率が低迷したので、
その梃入れのために、演出陣に高畑勲とともに投入された宮崎駿が当時の自身を
〈ディエンビエンフーへと降下した仏兵〉に喩えて回顧してたのを読んだ記憶が^_^;
あとは新聞社の特派員だった近藤紘一、古森義久、徳岡孝夫などの文章で知った程度。
ここで急に思い出し(←このブログを書くことの効用の1つ)、書棚の奥から探し出したのが、
殿岡昭郎『言論人の生態~思考と行動と知性を衝く』(高木書房,1981)。
ヴェトナム戦争当時の報道や評論を網羅的に批評・検証したものだけど、
巻末の「人名索引」を眺めると、最近のメディアでは見かけない懐かしい名前ばかり^_^;
それは喜ばしいことなのか、悲しむべきことなのか(..)

小説のわりには、付箋を貼った箇所が多かったが、その幾つかをメモ(^^)

本書上巻15~16頁

  そして三番目の―さいごになったが、決して軽んじているわけではない―縁起でもないこと。
  どうやらブッククラブへの返信を忘れていたらしく、郵便物にダニエル・スティールの長篇
  がまぎれこんでいた。返品するべきか?・・・

本書上巻129頁

  「帰ってこられなかったとき、そんな本[ダニエル・スティールの長篇]が家にあるのを
   他人に見つけられたくないんだ。わかるね? 欲しい人にあげてくれ。・・・」

本書上巻の最初の方で、ダニエル・スティールの本が何度かネタにされてるんだけど、
その可笑しさが理解できず笑えなかったのが残念^_^; 海外作品を敬遠する所以(+_+)

本書上巻512頁

  過去を懐かしく思うノスタルジーの気持ちは、
  つまるところ不愉快な事柄を忘れられる能力のことでもある。

本書上巻571頁

  「いや、歴史には学んだと思うよ。しかし、学んだからといって、
   新たな過ちをおかすことがないかといえば、そんなことはないんだ」

本書下巻44頁

  「だれにも見られていないとなると、豚はうしろ足だけで歩くのよ」

本書下巻83頁

  もちろん海兵隊員特有のおおげさな話だが、戦争にまつわるエピソードはどれほど
  針小棒大に誇張されていようと、話のもとになった真実の種子がかならずある。
  話が伝わっていくあいだに規模がどんどん小さくなった戦争のエピソードは、
  ひとつもきいたことがない。

なお、「なるほど、海兵隊は馬鹿話の宝庫である。」(本書下巻260頁)には納得で、
本書下巻266頁の語り口もそうだが、爆笑させられた(^^)

本書下巻255~256頁

  地獄は何層にもわかれ、下に行くほど悲惨になっていくが、戦争もおなじように何層にも
  わかれている。そして兵士はひとり残らず、自分が最下層の地獄にいると信じて疑わないし、
  そうでないことを納得させようとするのは時間の無駄だ。自分の地獄は自分の地獄、
  他人の地獄は他人の地獄。
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