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安野光雅&半藤一利『三国志談義』

かつて軍部の暴走を止められず悲劇を招いたけど、
半藤一利の暴走を編集者が止めないから喜劇となったのが、
安野光雅&半藤一利『三国志談義』(文春文庫,2015)。

本書は三国志(演義&正史)についての対談本でして、
いま書店に並んでいる本書の帯には、

  三国志キャリア六十余年!
  ウンチク過剰のふたりが繰り広げる放談録。

  コレ一冊で三国志が丸分かり!?

などとありますが、三国志マニアが読んだら、演義での
王朗のように、余りの衝撃に憤死してしまうかもね^^;
初心者に毛が生えた程度の小生ですら腰が抜けました。

半藤70頁

  たとえば、官渡の戦いの時、田豊という優秀な参謀が、
  曹操軍が官渡を離れたと聞いて「今こそ突っ込んでいけば勝てる」と
  攻撃を勧めたのに、袁紹は「子ども(末っ子の袁尚)が病気だから」と
  聞き入れなかった。

官渡の戦い「の前」の話で、曹操が徐州の劉備を攻めた時でしょ。

半藤73頁

  官渡の戦いの時、曹操・劉備の連合軍は、袁紹軍に比べれば
  人数で一対十くらいで、袁紹の方が断然優勢なわけですから・・・
  
「官渡の戦いの時、曹操・劉備の連合軍」は吃驚仰天。本書81頁で
半藤自身が「・・・官渡の戦いの前、劉備が袁紹のところへ逃げ込んで
連合軍となるのですが・・・」と述べてる。

半藤82頁

  ・・・曹操に追われた呂布が劉備を頼って荊州にきた時・・・

「徐州」に落ちてきた時でしょ。

安野も負けてはいません。

安野189頁

  私は丘の上[五丈原]、馬謖が殺されたと言われるところから見た風景を
  描きました。孔明が死んだところかなぁ、お宮みたいなのがありました。

五丈原は原っぱじゃなくむしろ台地という話での発言ですが、
馬謖の処刑は五丈原じゃなく漢中で行われたのでは?

安野203頁

  これは呂布が、自分の娘と袁術(袁紹の従兄弟)の息子との縁談話が
  進んだものの、やはりあそこにやるわけにはいかないと、娘を背中に
  くくりつけ、馬を駆って敵中突破して行った場面でしょう。

話が逆で縁談話を再び「進めるために」、自ら敵中突破して
「行こうとした」(けれど失敗に終わった)場面でしょ。

こんな感じなので、もう読んでて笑うしかないですね^^;
たぶん小生より詳しい人はもっと見付けてると思います。

一番上の発言を読んだ際、「なんじゃこりゃぁあっ!!!」と、
松田優作のマネをしてしまい、「半藤 三国志談義 官渡」と
ネットで試しに検索したところ、あるブログがヒットしました。
三国志に詳しそうな方が、本書の単行本(平凡社2009年刊)を、
誤りの幾つかを具体的に指摘しながら、厳しく批評してました。

本書は「文庫化に際し、加筆修正を行いました」と明記してます。
指摘されてた間違いの幾つかは訂正されてましたが、そのままの
箇所もあり、それ以外にも上記のような発言が連発されてました。

本書は三国志の登場人物に点数をつけたり、日本の歴史上の人物
に当てはめたりしてますが、前提となる知識がこれじゃあね^^;

でも、凄く細かく論じてる箇所もあるので、三国志を読んでいる
ことは間違いない。となると、お年を召されたためかなぁ(._.)

またお互いが言いたいことを言いっ放しで、相手の発言内容を
聞いてないのか、対話が成立してない場面(本書112~113頁等)
も見受けられました。御両所とも、お年だからかなぁ(+_+)

呆れたのが、対談内容に三国志とは無関係の雑談が多いこと。
御両所の薀蓄ですから何の役にも立たない事ではないにせよ、
三国志の話を期待した読者には退屈。中にはどうでも良い話
まで披露してて、こんなんで印税を貰うの?ブログでやれよ!

なお、本書41~42頁の中国でのエピソードは仮に小生が同じ
立場だったとしても同じ行動をとらざるをえなかったでしょうが、
笑い話として披露するのは如何なものかと。悪いのは中国政府だけど。

「本筋を無視しての脱線ばかり」(3頁)「ずいぶん脱線しちゃった
けど」(118~119頁)「南船北馬のおかげで脱線ばかりしてる(笑)」
(137頁)「さらに話が逸れるんだけど」(160頁)「また余談に
なっちゃったけど」(161頁)「・・・関係ないか(笑)」(230頁)など
といった調子で、三国志と関係のない雑談をしてる自覚は御両所
ともにあるのですから、対談に同席する編集者も制止して本筋に
戻したり、単行本化の際にカットするなり出来たと思うのですが。
御両所ぐらい売れっ子&大物になると止められないんですかねぇ。

平凡社と文藝春秋の編集者の名前も出てますが、三国志を読まずに
担当しているのかしら。「俳句もお上手なんですね」とおべっかを
言って半藤を〈デレデレ〉させる前に、本書のエゴサーチでもして
ネットで指摘されてる本書の誤りを正すぐらいの仕事はしろよ、と
(半藤の詠んだ自信作の川柳「趙雲はネンネンコロリと首をはね」
[本書218頁]はたしかに笑えたけど)。あと、細かいことですが、
吉川幸次郎による曹操の作った詩の読み下し文(本書80頁)や、
井波律子による趙雲評(本書104頁)の出典も書いてほしかった
(小生が実は毛も生えてない三国志初心者なことがバレるな)。

なお、俳句と川柳でみる名場面集(本書第五章)は良かったかな。

半藤の昭和史に関する数々の著作からは多くを学んできたし、
特に『日本のいちばん長い日』には感銘も受けた(ただ、ある
登場人物の回想録の記述と異なる箇所が存在する点は気になる)。
でも最近の発言は・・・晩節を汚しているとしか思えない(;_;)

まぁ、小生も記憶力が落ちてるし、笑えない喜劇だったな(+_+)

[追記150814]

『日本のいちばん長い日』に「ある登場人物の回想録の記述と異なる箇所が存在する」を詳述^_^;

  http://yomunjanakatsuta-orz.blog.so-net.ne.jp/2016-08-14
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