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吉川忠夫『王羲之』

書ではなく、王羲之の人柄、生活、思想を
その尺牘から読み解き(特に思想は著者の専門ゆえ)多くを学んだ、
吉川忠夫『王羲之~六朝貴族の世界』(清水新書,1984)。

王羲之の生涯だけでなく、歴史(東晋史)に関しても、
岡崎文夫『魏晋南北朝通史 内編』(東洋文庫,1989)、
宮崎市定『大唐帝国(世界の歴史7)』(河出書房新社,新装版1974)
駒田信二&常石茂ほか『新十八史略 第四巻 秋風五丈原の巻』(河出文庫,1981)
などにも出てこなかった史実も載っていて有難かった。

ただ、本書で紹介・使用されている尺牘は全て王羲之の
もので間違いはないのだろうか?王羲之の名に仮託した
偽手紙も存在しそうな気もするのだが。ちょい気になる。

細かいことだが、誤りと思われる箇所もメモっておく。

本書70頁

  すなわち前趙は、おなじ匈奴族の石氏政権、
  すなわち後趙によって滅ぼされた。


石氏は「匈奴族」ではなく、羯族だろう。

本書99頁

  司馬睿[えい]は八王の一人に数えられる
  琅邪王司馬迪[てき]の嫡孫であり・・・

琅邪王は(「八王の乱」の)八王には数えないはず。

2010年に岩波現代文庫から増補版が出てたのは読了後に
知ったが、ブックオフで108円でなくとも購入したいし、
同『劉裕~江南の英雄 宋の武帝』(中公文庫,1989)と
同様に上記2点も岩波現代文庫版では訂正されてそう。

思い立って『劉裕』を読んだが(3読目)、名著だな。
大昔に初めて読んだ時は、頭に全く残らなかったけど、
宮崎前掲書や駒田ほか前掲書を読んで、西晋から東晋の
歴史の面白さを知り、登場人物に馴染んだ後の再読から
同書の良さが分かった。やはりテクストは完結せずか。

明日は朝からブックオフを廻るのか。辛いなぁ orz

[追記]
石川九楊の「ガイド」で芸術新潮1998年10月号が「王羲之はなぜ〝書聖〟なのか」を
特集していたが(その後、同特集は「とんぼの本」のシリーズで書籍化されたみたい)、
王羲之の書の素晴らしさは残念ながら小生には分からないな(^_^;) 同誌58~59頁での
王羲之と他の中国有名書家たちを、その「永」と「水」の字で比べたのを観てもね(^_^;)

2015年7月14日付の冨谷至『四字熟語の中国史』の記事の追記で王羲之のことも補説(^^)
http://yomunjanakatsuta-orz.blog.so-net.ne.jp/2015-07-14

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